阿波和紙

奈良時代から継承される和紙

阿波和紙は徳島県の吉野川市で作られる和紙です。自然由来の柔らかな質感と耐水性が特徴のこの和紙の歴史はなんと奈良時代まで遡り、長い時を越えて愛されてきました。阿波和紙の歴史と魅力にクローズアップしてみましょう。

歴史
特徴と魅力
事業者

阿波和紙の歴史

始まりは忌部族

今から1300年ほど前、奈良時代に忌部族（いんべぞく）という朝廷に仕えていた人たちが阿波の国に入りました。後に阿波忌部と呼ばれるようになり、麻や楮を植えて紙や布の製造を始めました。これが阿波和紙の始まりと言われています。この和紙は奈良の朝廷、平安時代には京都に献上されていたそうです。
蜂須賀公による後押しと時代の流れで大きく発展

天正13年（1585年）、徳島（当時の阿波国）に入国した蜂須賀公が産業振興を推奨した4つの産業の中に阿波和紙も含まれ、その規模は拡大していきました。江戸時代には阿波藩の藩札や奉書、画仙紙などの御用紙のほか、特産の藍を使った藍染和紙が全国を席巻し、明治から大正期には全盛期を迎えました。
洋紙へ移行する社会

第二次世界大戦後は洋風化の波の中で日常生活での需要は洋紙へと移行してきています。手作業で作られる和紙は機械での大量生産ができる洋紙と比べて劣勢となり、社会から姿を消していきます。最盛期の明治中期には250戸あった製紙場も、徐々に数を減らしついに1社まで数を減らしてしまいます。ただ、最後に残り、専業として活動している1社は昔ながらの阿波和紙の伝統を守り続け、昭和51年（1976年）に国の伝統的工芸品に指定されました。

阿波和紙の特徴とこれから

自然の原料が生む心地よさ

阿波和紙の原料は楮（こうぞ）、三椏（みつまた）、そして雁皮（がんぴ）、桑、竹、そして麻などで、薄いながらも強くしなやかな和紙の風合いを作り出します。これらの原料が生み出す心地よい柔らかな手触りと丈夫さは、現在も一定の需要があり、全国から愛されています。
新たな使い道の開拓

また、現在では、写真インクジェット印刷用紙、美術用紙、インテリア用など、今の生活に生きる和紙を幅広く製造しています。また阿波和紙という伝統文化を広く知ってもらうため、工房では紙すき体験などを常時受け入れており、次代へと受け継ぐ新しい和紙文化の発信にも取り組んでいます。